大型テレビの正面には二つのイージー・チェアがあって、そのうちサイドーテーブルに接するほうは私の指定席になっている。深夜はよくここでLDの映画を見るが、そうでない時もたいていここに座って、夕刊を読んだり酒を飲んだり家族としゃべったりパイプをふかしたり、その全部を一緒にやったりして、とくになにと意識をしない時間を過ごしている。つまりこれは「ただ居る」ための席である。かつてはここに私が長年愛用し、幼い頃の息子たちから「グルグル椅子」と呼ばれたものが置いてあった。
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「グルグル椅子」はその後も修理を重ね、書斎に移されて健在だが、現在の居間のイージー・チェアも座り心地がよく、とくに幅広の背に首筋をあずけて、いわばだらしない姿勢をとると身体がスッポリくるまれた感じがするので、そうして懐かしの名画を見るのは私の至福の時間の一つである。これは父の会社の役員ラウンジ(会議室ではなく、会議の後にくつろいで一杯飲むような部屋)を設計した時に私が選んで納めたフィンランドのメーカーの製品だが、会社の事情でこのラウンジが廃されて不用になったために捨て値で譲り受けたものだ。なぜかオットマン(足を載せる台)は一個しかないので、妻とLDを見る時は取り合いになり、結局は程よい位置までずらして二人の足を載せることになる。